アノコロ

アノコロ…

 

私にとって、彼の全てが新鮮で、退屈な毎日の突破口になってくれるような存在だった。

 

ずっと日本で当たり前のように、義務教育を経て、大学卒業して、いわゆる会社員になった私にとって、彼の若かりし頃の破天荒?な体験談はあまりにも新鮮だったんだ。

 

彼を通して、知らない世界が広がっていくのがとてもとても楽しかった。

 

彼と出会ったのは、特に不満があったわけではなかったけど、漠然とこのままこの会社でずっと働いていくことに不安を覚えてた頃だった。

 

もう、具体的には思い出せないけど、私は彼に、これまでの私のこと、今の会社で求められていること、それに対して自分なりに考えていること、などなど、かなり短いスパンの中で、ぜんぶ一気にわーっと吐き出した気がする。

 

彼が特別何か与えてくれたわけじゃないけど、私のことを一生懸命理解しようと、私のために彼の時間のほとんどを費やしてくれる彼のことが、私にとっては、自分の一部になっていった。自分のことを押し付けずに、ただ話を聞いてくれる彼の存在は、私にとって、とても貴重な存在だったんだ。

 

彼からはっきりとした助言をもらったわけではないんだけど、なんか急に思い立ったように、会社を辞めた。自分でもびっくりだったけど、他の選択肢は浮かんでこなかったんだ。このときの自分の感情をうまく説明することは今でもできない。

通常の私の思考回路で言ったら、辞めた次のことに対する不安の方が先行して、きっと、この決断には至らなかったに違いないのだが、彼が付いている、という精神的な安心感から、思い切った決断に至ったのかもしれない。

あとは、ウダウダ言っていること自体が急にバカバカしくなったんだ。ウダウダ言ってたって、一生ウダウダ言ってるだけで何も変わらない明日がやってくる。そんな時間、なんの意味もない、無駄だ、って思ったんだ。先のことは分からないけど、とりあえず、一旦会社辞めよう。そんな感じ。

 

辞めて働かない期間中、彼と一緒に海外もたくさん行ったし、これまでしたことないことにもチャレンジした。

 

世界が一気に広がった。